『Jazz Kids vol.1 はじめてのジャズピアノ』を使って
2012-09-20


●この教材の大きな特徴
稲森康利先生といえば、ハーモニーの達人。そして、先生の教材といえば、ビル・エバンスやジョージ・シアリング、ミッシェル・ルグラン、カーメン・キャバレロなどを髣髴させる、巧みなハーモニー術を説いた厚い(熱いが正しいかもしれません)本を思い浮かべます。その、美しい色彩感に満ちた、趣味の高い世界を手に入れようと、先生の書を紐解いた・・・が、圧巻のアレンジ論に目を回してしまった、という経験をされたかたも多いことでしょう。

稲森先生の教材は、基本的には高度なものです。しかし、昨年、稲森先生が「子どものために」書かれたこの教材は、子どもやジャズ初心者でも理解できる表現で、かつ、とてもシンプルに書かれています。まさに「単純・明快」。しかし、最低限の音でありながらちゃんとしたジャズサウンドが楽しめます。「これは必要、これは必要ない」というところがはっきりしており、そこに、改めて先生のすごさを感じます。

●私の教室における活用法
この教材が出版されて以来、私の教室では、非常に活用させていただいています。子どもにおいては、バイエル程度を学習した後、ブルグミュラーとこの教材を並行して学ばせています。大人の方も、初心者のかたはもちろん、クラシックをかなり学んだ方も、ジャズはこの本から始めています。また、イナモリメソッドのもっと難しい教材を使っていた方も、こちらから1から学び直したいと言われ、基礎固めをしています。

そんなわけで、私はほぼ毎日この教材と向き合っています。その中で、思ったことを書かせていただきます。この本を進めるにあたっては、独学で学ぶにしても、指導する側だとしても、1ページも飛ばさず、この本の指示に従ってすすめていくことが大事だと思います。すべてが、体系に組み込まれ完全な形を成しているからです。この教材にはブルースを中心に10曲収められています。(すべて先生のアレンジ、うち5曲は先生のオリジナル)どれも、非常に少ない音数で、応用的なものは排除され、原点的な理論のみで書かれていますので、音を追うこと自体は、それほど難しくありません。また、ジャズ理論のページが本のおよそ半分を占めています。曲中、確認するべき理論と、そのページが☆印で示されており、それに従うことがポイントです。1ページ1ページを大事に進めたならば、この1冊で、ブルースの仕組み、ジャズの音使い、スウィングのリズム、2音によるジャズレフトハンド(部分的に3音まで)、簡単なアドリブを習得できます。
先生の模範演奏、プロプレイヤーによるマイナスワンCDもついており、たくさん聴くと良いと思います。先ほど書いたように、どの曲も、少ない音数で書かれています。しかし、先生の模範演奏を聴くと、違います。絶妙なノリが違うのです。この意味においては、初級者のみならず、中級者、上級者が聴いてもたくさんの気づきがありそうです。私も、先生のノリを盗みたいものだと、何度も聴いては挑んでいます。

さて、今回Vol.1の感想を書きましたが、このシリーズは現在Vol.2まで出ています。Vol.2については詳しく書きませんが、ブルースに加え、スタンダードナンバーもあり、アレンジも、この地点でかなりお洒落です。
また、Vol.3の出版も予定されているとのことで、非常に楽しみです。

文:間島佳代子

間島佳代子音楽教室
[URL]

『ジャズキッズvol.1』
[出版情報]

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