[Jazz on Youtube]“As Time Goes By 〓Manhattan Jazz Orchestra”
2011-08-15


Manhattan Jazz Orchestra “As Time Goes By”
[URL]
 
映画「カサブランカ」の挿入歌としてお馴染みの”As Time Goes By”。「時のすぎゆくままに」という邦題で知られていますが、「時が経っても」という意味合いのようです。もともとは1931年のミュージカル“Everybody’s welcome”のためにHerman Hupfeldが作詞・作曲したもの。クールなハンフリー・ボガードと、輝くような美しさのイングリッド・バーグマンの主演ということで、この曲がリクエストされることが多いようです。映画の中ではドーリー・ウィルソンが弾き語りをしていましたが、レコード会社のストライキによりレコーディングができませんでした。

 映画の中でも政治的な駆け引きと恋の駆け引きが絡み合うストーリーですが、この曲が作られた時期も社会情勢に目が離せない時期でした。折しも1933年は大不況の真っただ中、ヒトラー率いるナチスが政権を握り、不穏な時代の足音が聞こえ始めたころです。ナチスの手からのがれたアインシュタインはプリンストン大学の教授に就任し、米国に渡ります。彼はルーズベルト大統領に書簡を出し、核爆弾についての可能性について、ほのめかしています。その後、機密事項として核実験は進められ、ヒロシマ・長崎に被害をもたらすことになりました。アインシュタイン自身は核兵器製造には一切関わってはいなかったものの、後にこの書簡に関してひじょうに後悔し、核廃絶と戦争の根絶、科学技術の平和利用についての内容を記したラッセル・アインシュタイン宣言書に署名しています。

当時、世間を騒がせていた相対性理論についての少し批判的な歌詞が、この曲のヴァースには出てきます。
「アインシュタインの相対性理論には少しうんざりしてきた。現実に立ち返らなくちゃ、もっと気楽にいかなくちゃ。私たちが生きていく上で必要なのはもっとシンプルで、動かしがたいあたり前のことなんだから。キスはキス、溜息は溜息、どんな時代にも“I love you”は変わらない。女には男が、男には女が必要。昔から何も変わっちゃいないあたり前のこと。世界はいつだって変わらずに恋人たちを歓迎してくれる」

映像はManhattan Jazz Orchestra。ピアニストであり編曲家でもあるDavid Mathewが率いるオーケストラ。1989年に作られたばかりのバンド。なかなかかっこいいです。

池田みどり
[楽曲・作曲者]

コメント(全0件)


記事を書く
powered by ASAHIネット