【音楽こぼれ話】 ビル・エバンス その2
2010-02-28


多くの巨人と言われるジャズミュージシャンがそうであったように、ビル・エバンスも決して恵まれた環境ではなかったようです。
名盤で知られる“Sunday at the Village Vanguard”も客席がガラガラだった様子が、聞いていてもわかります。お皿を洗う音が響き渡っている。でもこの演奏は歴代の名演奏となっています。

ニューヨークの名門ジャズ・クラブ「ヴァンガード」ではミュージシャンを1週間単位でブッキングすることになっていました。ビル・エバンスも火曜日から日曜日で、最終日がレコーディングに当てられることになりました。しかし客の入りが悪く拍手もまばらなので、親戚や友人に連絡してきてもらったそうです。それでも拍手はそれほど多くありません。
(参考:「ジャズおもしろ雑学事典」小川隆夫著)

「ニューヨークに来てぶちあたった現実問題は、どうやって食っていくかということだった。そこで出した結論は、ピアノを弾き続けようということだった。あきらめずに弾き続ければ、必ず誰かが認めてくれる。ピアノだけに限らずそれが私の生き方なんだ。」

このDVDでは、彼の真摯なジャズに対する姿勢と熱意が感じられます。彼自身ジャズスクールで当時11人の生徒を受け持っていたそうですが、そのうち8人がコードを勉強することさえ、いやがったと語っています。彼の熱意は直接の生徒にはあまり伝わらなかったのかもしれません。ここでは次のように語っています。

「ジャズを弾く技術を身につけるためには、個々の技術を順に学ぶべきだ。それらの技術を集中して身につけ、無意識にできるようになるまで練習するべきだ。」

彼は13歳からプロとして活動するようになった後も、時間が許す限り週5日練習を続けました。

「私は自分に才能があるとは思っていない。しかしそれが私の強みだ。技術を磨くうちに分析力が自然と身についていった。おかげで問題に直面した時の対処法や、自分を表現するために何が必要か、どれだけ努力すべきかが、よくわかるようになった。つまり、苦労することには価値があるのさ。」

※次回は”デューク・エリントン”をお送りします。
文章:池田 みどり
[楽曲・作曲者]

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